こんばんわ、トーコです。
今日は、樹木希林の『一切なりゆき~樹木希林のことば~』です。
■あらすじ
2018年9月に女優・樹木希林は亡くなりました。テレビや映画、CMなどで個性的なキャラクターで多くの人に様々な印象を残しています。
その一方で多くのことばを残しています。そんなことばをまとめた1冊です。
■作品を読んで
樹木希林が亡くなってから様々な本が出版され、結構ベストセラーになったりしていました。
とはいえ、娘の内田也哉子さんが何かで語っていたのですが、おそらく遺族はよくわからないままに出版されているはずです。
しかもまあ、新聞や雑誌の連載からの引用なので、著作権者はあくまで新聞社や出版社で故人に帰属していないので、御礼申し上げますという挨拶はあくまで新聞社や出版社なので、遺族は下手をしたら知る由もないです。
著作権の関係上問題はないとのことのようでしょうが、それはそれで別問題があるような気がしますが…。まあ、亡くなった人の残した言葉がこうして読めるというのはありがたいことだ、ということにしましょう。
さて、中身に移りましょう。
この作品は樹木希林が生前雑誌や新聞で語っていた言葉について、生きる、家族、病、仕事、人間のこと、演じたものについてカテゴライズし、まとめています。
ことばは非常に簡潔なので、非常に読みやすいです。ただし、よく読まないと本当の意味が分からなくなると思います。
このパターンが意外と難しい。簡潔で分かりやすい言葉で語っているからこそ読解力が要求されます。意味を取り違えるのではないか、と。
まずは、こちらのことばから。
しっかり傷ついたりヘコんだりすれば、自分の足しや幅になる
これは目次には言葉が書かれており、この部分だけがフォントを変え、タイトルのようになっています。
これだけを拾い読みして読んだ気になってはいけません。この奥に様々な意図があるのですから。
続きは、こうです。
ただ、人として生まれたからには善も悪も欲も全部ひっくるめて、ちょっとそぎ落としたところで着地したいというのはあるのね。最後は樹木希林という”皮”も脱ぐ。
その時々の人生で得た足しや幅を最後はそぎ落としたい、と言います。すごい境地だな、そこに行きつくんだ、と脱帽します。
おそらく人気が出たのって、独特の人生観が現代人の欲求に合致したんだと思います。
がんじがらめの日常とはまた違うリズムで社会と生きてきたんだと思います、この文章を読む限り。自分のルールに従いながら生きてきた。
仕事に家事に子育てに、様々な状況下に置かれていると思います。そんな時に泰然自若な樹木希林の姿がまぶしく見えるものです。
と、トーコは推測しましたよ。インターネットのおかげでつながりを持ちながら生きることができるようになりましたが、変化のスピードが速すぎて時には疲れます。
けど、事務所も持たず、マネージャーもおらず、仕事の受付はFAXで行っていたという独特のスタイルは、もはや生き様でしょう。
それに若いころの写真を見ると、内田裕也と結婚するだけはあるね、というくらいなかなか個性的な衣装が似合っていましたから。
髪の色も派手だったんじゃないかな。モノクロ写真なのにおそらく髪色明るかったんだろうなと思えるくらいの色してましたもの。
お次はこの言葉。
男でも女でも、ちょっとだけ古風なほうが、人としての色気を感じる
このちょっとだけ古風という表現が解釈を間違えそうな言葉になっています。ちょっとだけ古風=何も飾らない、という意味でしょうか。
言いたいことはわかります。けど、言葉として咀嚼するのが非常に難しい言葉です。余計なものがない状態といったところでしょうか。
言葉とともに内田裕也とのエピソードも絡めています。結婚し、3年足らずで別居。1回離婚届を内田裕也が出したら、裁判を起こし撤回させるという強烈なエピソードもあります。
それでも、樹木希林の中では必要なことだったと述べています。おそらく想像できないけど、もともと似たもの同士のはずです。
というか、家でDVの被害に遭い、よく包丁を買うのね、と店屋からは言われたとか。まあ、お互いよく戦っていたんだと思います。
年をとれば変わるもので、顔は履歴書なんて言いますからいい年の取り方をしたのでしょう。顔に書いてあります。
なんとなくですが、かなり独特の家族感を織り交ぜています。というよりも、娘にモノを買わない(お金があるのに買わない)とか、自分の感性にお金をかけるとか。
うーん、このよさやニュアンスをうまく伝えることができないから、読んだ方がいいです。
病気の章では、きっといつかやってくるんだろうな、と先取りしたような気分で読みました。
晩年はがんにおかされていたので、今までの人生観を変えざるを得なかったのでしょう。すごくがんに真摯に向き合いながら生きていたんだと感じます。
最後にこれだけ。
この年でこんなに厳しい現場にいられる私たちは幸せね。
年を取ると他人から厳しい要求をされるということはめっきり減ります。
そんなときに、河瀨直美監督の『あん』という映画の現場で市原悦子さんと言ってたのだとか。
厳しい環境も一時だけなのかもしれません。また、たまには自ら厳しい環境へ飛び込むのも必要なことなんですな。
■最後に
亡くなった人のことばを書物にまとめることで、こうして後世の人間が見聞きできます。
私たちが求めている、というか理想とする生き方のヒントが詰まっているから多くの人に響いたのでしょうね、きっと。