こんばんわ、トーコです。
今日は、ベネデット・コトルリの『世界初のビジネス書』です。
■あらすじ
15世紀のルネサンス期のイタリアで活躍したベネデット・コトルリは、ビジネスの成功の秘訣をまとめた『商売術の書』を出版します。
この作品は、仕事の心構えや商取引の実務、経理や財務の知識、後継者の育成など、現代の私たちから見ればビジネス書のような気がしてくる内容に触れられています。
さて、一体500年前の人はどんな教えを残してくれたのでしょうか。
■作品を読んで
トーコ的には、学生時代に中世イタリア簿記史なるもので卒論を書いた経験から考えると、世界初のビジネス書は中世イタリアと言われても、「やっぱりか…」と思っただけでした。
というのも中世イタリアは交易の中心にいた時代でもありましたから。
中世イタリアの世界初って、複式簿記、保険会社、株式等があり、今の経済や金融を作ったものの原型が数多く生まれていました。
なので、世界初のビジネス書が中世イタリアにあってもおかしくはないんだろうな、と思っております。ビジネスマンがたくさんいたのですから。
さて、なぜコトルリが世界初のビジネス書を書いたのか。その前に、時代背景だけ軽く見ていきましょう。
中世のヨーロッパは少しずつですが、生産性等が向上し、人口も増えていきました。しかし、100年戦争が勃発することで、少しずつですが経済活動が停滞していきます。
さらに追い打ちをかけるがごとく、ペストが大流行します。ペストは有名な疫病ですね。しかしまあ、どこかで聞いたことのある状況ですね…。
それが明けてきたころに、ベネデット・コトルリがラグーザの商人の家に誕生します。
コトルリは商売活動を行う一方で、ボローニャ大学で教養を学んでいます。なので、商業的な経験と人文的な考察ができる素地はあるわけです。
コトルリは、1458年に『商売術の書』を書き上げます。ちょうどそのころ、ナポリで広まったペストから逃れている最中でした。
この本の優れていることは、複式簿記のような技術の説明だけではなく、商売の存在理由とあるべき理想とその指針を示していることです。
まさに、商売の先駆けを示しているのです。
とはいえ、この原書は4巻構成ですが一部難解な表現が使われている箇所もあるので、イタリアの経済ジャーナリストのアレッサンドロ・ヴァグナーさんという人が編集し、15箇条の法則にまとめ直します。それが、『名誉とともに富むことー善き企業家の礼賛』というタイトルで出版されました。
このヴァグナーさんの訳本が今回の作品になります。2018年の本国イタリアでは、コトルリの作品が見直されてるんですね…。
それでは、作品に行きましょう。まず、心構えでこう説きます。
取引や商売を望む者は、適切な場所を選び、不適切な場所を避けなければならない。
新しく商売に就いた人にはほとんど理解されていない可能性はあります。少ない出費で、他に商売相手がいない場所で場所を選びます。
ですが、自分の活動の本拠は、商人たちが足繫く通い、住んでいる場所を選んだ方がいいです。
そして、空気が健康に適しているな書がいいです。空気は人間の生活にとって最も必要な要素の一つであり、それが健康によいものであれば、大変有益です。
って、これは今も昔も変わらないですね…。空気が悪かったらそら病気にもなりますからね。
常に新しい取引を検討して、試みる
なんだか、今も昔も変わらない、ということを教えてくれます。自らの活動を変え、手直しすることは必要です。アップデートしながら、人は発展する。商人じゃなくても一緒ですけどね。
また、商人には体力と忍耐が要求されます。会社員以上なんでしょうね、きっと。というか、利益を上げなければならないのですからね。プレッシャーもありますよね、きっと。
ここでいう体力というのは、健康的な状態に保つということであり、疲労に耐え、商売の限界を超えようと努力することでしょうかね。
決して荷物運びとは違うのですよ、という例えを使っていますが、知性を持った健康的な人というイメージです。
商売は世界を動かしているのであり、最も高貴なものである、というのにふさわしい状態をキープすることですね。
また、品質についても、
商人は自らの技芸において評判を保持しなければならない。
宝石商なら偽物を売ってはいけないように、品質を落としたものを売ったら評判は落ちます。って、これも今と変わりません。
また、債権者に対しては、巧みに、決然として対処し、自らの生産物が将来に然るべき成功を収めることを説得しなければなりません。これも今と変わりませんね。
商売の基本って、500年以上昔と変わらないことが多いですね…。変わらないんですね…。
その6が会計なのですが、常に正確な帳簿を持てということです。なんと、複式簿記の書き方まで指南されます。
まあ、会計上の利益と損失を計算するのには必要ですからね。
その10が心の在り方なのですが、平穏、堅固、誠実、自制が求められます。
この中でも堅固のところの、
浅はかな、辛抱ができない商人は、商人とは見なされないことを肝に銘じなさい。
事業において決然としているべきであり、気が変わりやすかったり、軽々しいのはちょっと…。
逆境においても取り乱さないし、順調なな時にも舞い上がらないことが求められる、というのはキケロの頃から変わりません。キケロは紀元前40年くらいに活躍した人なので、超大昔から変わらないですね、いろいろ。
その13は後継者の育成になります。というか、育成方法がまさかの子どもを優秀な商人につかせるというもの。なんだろう、丁稚奉公の頃から変わらない常識。
その14は家庭生活で、家族を大切にせよ、ということ。その15は資産運用ということで、家を2軒(暮らすための家と家族の喜びのための家)持つだとか、投資をするとったこと。
何というか、今の時代でも普通に生かせるようなことがたくさん詰まっています。
■最後に
世界初のビジネス書に書かれている内容は、今の時代でも有効なことがたくさん詰まっています。
商売の基本は500年経っても、驚くほど全く変わっていないです。それだけ商売の形は変わっていないのですね。