こんばんわ、トーコです。
今日は、廣瀬陽子の『ハイブリッド戦争』です。
■あらすじ
ロシアがウクライナと戦争を始めたときに、若干話題になった言葉に「ハイブリッド戦争」という言葉がありました。
この戦争を読み解くうえで必要な言葉です。この作品では、ロシアだけでなく世界中で起こっているハイブリッド戦争を解説していきます。
■作品を読んで
この作品は、2022年2月にロシアとウクライナで戦争が始まった時に、Twitterでこの戦争を知るための本の1冊として紹介された本です。
ちなみにもう1冊は、359.『物語 ウクライナの歴史』著:黒川祐次
この作品は、結局2022年4月には読んでいましたが、ブログをこうして書くころに戦争は終わっていませんでしたね…。続いていますね。
それでは作品に行きましょう。
冒頭で、ある人物の紹介が入ります。男の名は、プリゴジン。
クロスカントリースキー競技に従事ののち、幾多の罪状で逮捕、9年間刑務所で過ごします。保釈されてからは、食料品店からレストランサービスで一財産を築き上げ、やがて政治家に近づきます。
世はプーチンが大統領に戻ったころ、子どもや軍人への給食サービスに乗り出します。子ども向けは学校給食として。とはいえ、防腐剤が大量に入った食事を提供したことで親から猛抗議を受け、工場は廃止されます。が、仕出しは維持しています。不思議だ…。
軍も食事と清掃をアウトソーシングしようと政治家が言ったので、プリゴジンの会社が9割のシェアを勝ち取ります。とはいえ、国防大臣が変わったらアウトソーシング話はなくなりましたが。
このプリゴジンの話は、ハイブリッド戦争を語るうえで鍵を握ります。
ハイブリッド戦争とは、正規戦・非正規戦が組み合わせた戦争のことです。正規戦は、一般の方は映像で出てくる戦争をイメージすると思います。
非正規戦って何と言われると、サイバー攻撃やUAV(ドローン)による攻撃、政府メディアやSNSを使ったプロパガンダにあふれた情報戦をイメージすればよいでしょう。
これが序章の部分です。ここからは、
- 第1章 ロシアのハイブリッド戦争とは
- 第2章 ロシアのサイバー攻撃と情報戦・宣伝戦
- 第3章 ロシア外交のバックボーンー地政学
- 第4章 重点領域ー北極圏・中南米・中東・アジア
- 第5章 ハイブリッド戦争の最前線・アフリカをめぐって
第1章で、もう少しハイブリッド戦争の定義を見て見ましょう。
ハイブリッド戦争とは、正規戦・非正規戦が組み合わされた戦争の手法です。軍事的な戦闘に加え、政治、経済、外交、プロパガンダを含める情報、心理戦などのツールのほか、テロや犯罪行為も公式・非公式関係なく組み合わされます。
21世紀になるとこのタイプでロシアは戦争を仕掛けるようになります。簡単に言うと、同盟の弱体化・ロシア自身の拡充を目的としています。
なんでこんな形で戦争をするようになったのか。それはコスパがいいからです。特に、PMCという民間軍事会社の登場は余計にコストカットに貢献しています。
人件費が削れる、サービスの向上、効率が良い、死の保障をしなくてもよい、国際的な批判を受けずらい、軍事力の補填がメリットとして挙げられます。
後半の死の保障(金銭面での)、PMCに戦争を担わせれば国際的な批判をかわせること、軍事力の補填は大国だけでなく弱小軍事力の国も需要があります。
PMCが暗躍する必要がないくらいの平和な世の中がいいです。
第2章は、ロシアがハイブリッド戦争を実際にしているの実例をあげて紹介しています。
近年までは、ロシアにとって敵対している国、組織に対する攻撃、選挙などの大きなイベントに乗じた攻撃が目立っていました。しかし、最近のサイバー攻撃は、かなり静かに情報を窃取しています。
第3章は、ロシアの地政学です。地政学だけで本ができそうですが、この章は約40ページで収めています。
とはいえ、地政学なくしてはロシアを語ることはできませんが、ここでは割愛します。
第4章は、今後のロシアが睨んでいる重点地域です。
基本は旧ソ連時代の国を中心に、必要に応じて中国やアジアにも広げていきます。
さらに言えば、太平洋、シリアなどアメリカの影響が意外と小さいところにも進出しています。なかなか賢いぞ…。
シリアはロシアのハイブリッド戦争の舞台でもあります。民間軍事会社が跋扈してますからね。
地理的にもシリアは欧米戦略をとるためにも重要な基地のためです。また、ロシアは武器を国際的に販売しています。それは他の欧米諸国から見ればめっちゃ恐怖ですけどね。
第5章は、ハイブリッド戦争の最前線・アフリカをめぐってです。
アフリカ進出は中国だけでなく、ロシアも行っています。
というか、なかなかにアフリカを抑えるのがうまいです。
経済や軍事だけでなく、政治の面でも抑えてるのですからね。戦略があるなあ、ロシアは。
■最後に
2023年6月に突然プリゴジンの会社が反乱を起こすという、怪現象が起こりました。
この作品を読めば、プリゴジンが何者かは事前にわかっていたことでしょう。決して驚かなかったのかなと思います。
ロシア情勢を理解する一助になること間違いなしです。