こんばんは、トーコです。
今日は、大石始の『異界にふれるニッポンの祭り紀行』です。
日本には様々な祭りがあります。子供がトラウマレベルになるような祭り、大人たちも祭りのために生きていたりと、土地の暮らしも見えてきます。
この作品では、知らないことが多いニッポンの祭りを知ることができます。
■作品を読んで
何というか、すごくディープで濃い本です。
祭りといえばトーコの場合は、以前住んでいた川越だと10月に川越まつりがあって、確かに地域の方たちは山車を引かないといけなくていろいろと準備されていました。観光で行くには迫力があるのでしょうが、川越に縁もゆかりもないと「駅が混む、道が混む」という印象でしかない…。
山車を引く祭りは八王子にもあるようです。以前勤めていた職場でも言われましたね…。
とまあ、観光名物化する祭りだけが祭りではないことがこの作品では示されます。すんごい、ディープな祭りも全国各地にあります。
著者はカメラマンの奥さんとともに、日本全国を廻って取材して来ました。
その中身を見ていきましょう。
まず、川越のご近所の自治体鶴ヶ島市。ここでは、脚折雨乞という奇祭が4年に1度行われます。
何の変哲もない幹線道路に突然、300人の男たちに担がれた全長36メートルの龍が横切ります。という光景を目の当たりにしたら、あなたはどんなリアクションを取りますか?
トーコでしたら、たぶん唖然呆然とします。なんか、想定外すぎてビビると思います。
鶴ヶ島での雨乞祭りの始まりは、明治7年。もともと雷電池(かんだちがいけ)という池で雨乞の儀式を行っていたそうですが、池がだんだんと狭くなり、神様である大蛇様が板倉雷電池(群馬のほう)に行ってしまったからでは?と思ったそう。
なので、板倉雷電池で降雨祈願を行い、その水を持ち帰って雷電池にまいたところ、見事に雨が降り、雨乞に成功したというお話。
明治時代から始まった雨乞の儀式も、社会状況の変化(専業農家の減少)もあり、昭和39年に一度中断。それから昭和50年代に復活します。
主催者は保存会とし、以後4年に1度のペースで祭りは実施されてきました。ちなみにですが、2020年はコロナで中止となったため、2024年8月(調べたら出てきます)に開催されるので、中8年間開催されていなかったお祭りです。(道理で知らんわ…)
ご興味ある方、まだ間に合いますので、ぜひ8月4日に鶴ヶ島市へ足を運んではいかがでしょうか。
あと、パーントゥという宮古島のお祭りも強烈です。
パーントゥは全身に泥を塗りつけ、仮面をかぶった来訪神が集落を駆け回り、強烈なにおいを発する泥を塗ったぐるという、聞くだけでトーコは遭遇したくない…と思わせる行事です。
しかも、何がすごいって、泥を塗られた観光客が激高し、来訪神に暴行を加えたという事件にまで発展。なので、パーントゥは直前まで日時が公開されていないのだとか。
これ、逆だと思うのですが…。日時を公開して、この奇祭の内容を説明したうえで納得させたうえで参加してもらわないと、島の大切な文化がかえって失われる事態になると思うのですが…。
内容も、昼間から夜までずっとパーントゥが駆け回っており(壮大な鬼ごっこ)、夜に仮面をつけたパーントゥに遭遇し、泥をつけられたものにはトーコはきっとトラウマになること間違いなし…。
著者のルポを読む限り、下手するとこれこそリアル鬼ごっこ…。しかも、泥のついたTシャツは、何度も洗濯してもにおいが取れず、やむなく捨てる羽目になったとか。うむ、すごいぞ、この話。
他にも、東京の板橋でも奇祭はあります。「徳丸の田遊び」という祭りです。
徳丸神社という最寄りは高島平駅近くの神社で、少なくとも江戸時代から300年以上続いているかなり由緒ある祭りです。
昭和30年代の高島平駅周辺は田んぼが広がっているような場所でしたが、昭和40年代に入ると大規模な団地造成があり、コンクリートに覆われています。
田遊びとは、稲の生育と豊作を演じることで、五穀豊穣・子孫繁栄を祈願する予祝芸能の一つです。
お祭り自体は、境内でひっそりと行われるもののため、50年間地域に住んでいても初めてくるような方もいたそうです。(それはそれですごい話ですが、確かにお祭りとして地味めならそうなるか…)
祭り自体は、田んぼの1年間の工程と面をかぶった夫婦が絡み合うシーン等が、舞台の上で繰り広げられます。正味1時間半ほどで終わりますが、娯楽の少なかった昔は深夜2時までやってたとか。
都会にもあるんだなあ、と思う今日この頃です。
祭りは地域の伝統行事ですが、著者のように祭りに参加しながら、民俗学的な要素も織り込んでおり、とても気負わずに読むことができます。
これは、おすすめです。
■最後に
ニッポンには、こんなにへんてこな祭りが(中身を読むとちゃんと由来があって、そうなっている)たくさんあるんだな、と思います。
地域の歴史も知ることができます。人口減少が進むので、こういった祭りがあることを覚えてほしいなと思う今日この頃です。