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文庫本

【まだ見ぬ地へ行く】296.『パタゴニア』著:ブルース・チャトウィン

投稿日:4月 18, 2021 更新日:

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こんばんわ、トーコです。

今日は、ブルース・チャトウィンの『パタゴニア』です。

パタゴニア (河出文庫)

 

■あらすじ

幼いころに見た小さな毛皮のかけらから遠いパタゴニア地方に魅せられ、そこを端にして始まる壮大な旅の記録が綴られています。

パタゴニアという地は果たして如何ほどの場所でしょうか。

 

■作品を読んで

まず、文庫本の値段にびっくり。まさかの定価1200円って、おい。高いよ…。貧乏小市民にはつらいぜ、とほほ。

とはいえ、読みたいはいいが最寄りの図書館にはないので、しょうがない買うしかない。

ラッキーだったのは、河出文庫のブックカバーがもらえますフェアの対象本だったので、喜んでブックカバーを頂きましたが。

さて、話に戻ります。

幼少期に祖母の持ち物の中にパタゴニアにいたブロントサウルスの皮を本物と信じ切っていた少年が(それは実際には偽物でしたが)、パタゴニア地方への興味を失うことなく、冒険の旅に出ます。

小さなかけらから物語が始まります。かけらがまだ見ぬ地へ連れて行くのですからね。

それから、パタゴニア地方に向かうべく、まずはアルゼンチンのブエノスアイレスにやってきます。

そこで南米一の自然史博物館を見てから、夜行バスに乗り、パタゴニア地方に向かうべく南下します。

パタゴニア地方に到着してからは様々な人と出会い、新しい知見を得ながら徐々に点から線へと変わっていく旅が続きます。

しかもそれがうまいこと伏線だったり、サブエピソードとして機能しているのですからこの作品が文学的要素もあります。

通りかかった人と一緒に人をたずねたり、紹介で様々な人に出会ったり。人とのつながりからどんどん話が膨らみ、新たな発見が広がっていきます。

なんか、いいな。現代社会ではそんな場面が少ないからうらやましく感じられます。同時に、この体験ってなかなか刺激的です。

時折様々な土地の情報や食べ物が描かれています。例えば、振舞われた焼き肉について。

父親は地下の食料置場に行った。彼は吊り下げてあった羊肉の塊からばら肉を一枚切り取り、脂肪をそぎ落とすと、それを犬に与えた。彼は肉を十字形の鉄の焼き串に固定し、それを火のまわりの地面に突き刺した。それから、酢、ニンニク、トウガラシ、オレガノなどを使ったサルムエラというソースをつけて、焼き肉を食べた。

この当時の食べ方が凄すぎる。肉は羊肉なのだが、家の食料置場からって、この時代のパタゴニア地方って家には食料置場がセットだったんでしょうね。すごいにおいがしそう…。

サルムエラというソースもなかなかに気になります。一体どう例えればこれは伝わるのか、完全にお手上げです。でも、きっとおいしい気がします。

さらに、この紀行文の中には歴史や生物学などの様々な知識が織り交ぜられています。読んでいて結構ためになります。

なんというか、このご時世(読んでいた当時は2020年11月ごろ)旅に出られるのが絶望的過ぎてどうしようとなっていたので、こうして本の中で旅ができるのは幸せですし、また旅に出たくなります。とはいえ、今は我慢。

あとがき(なんと池澤夏樹でした。以前紹介した292.「ぜんぶ本の話」の人です)にも示されています。こんなふうに。

…、彼の奔放さである。まず土地があるのではなく、まず自分がいる。行った先の風土を観察する前に、その土地が自分の中に喚起する知的好奇心の展開の方を重視する。

言われてみると、この人はまず自分が感じたこと、感じた風景とあくまで自分が軸。確かに、著者も結構どストレートに感情を出すこともあります。例えばこんな感じ。

「きれいだわ」 草地が森に変わる黒い境界線を農場から眺めながら、彼女は言った。

「でも、もう一度来たいとは思わないわね。」

「僕もです」と私は言った。

彼女はイギリスで写真家でしたが、やめて園芸家として働くさなかで母親の看病をし続けます。母親が亡くなった後、家財道具を売り払い、旅を続けていました。余談ですが、この女性は日本に立ち寄り、京都を見ています。世界中を見続けたもの同士、そこは意見が一致したようです。

あまり昔の紀行文を読んでいないので、イメージで話しますが、自分軸で展開していく紀行文というのは意外と少ないかもしれません。

この作品が書かれたのは1977年のようで、20世紀後半の新たな旅行記の古典として高い評価を受けているとのこと。(文庫本の著者紹介の1文をほぼそのまま引用しています)

あの、実は読んでいるこっちとしてはなんだか1950年代くらいに旅していたんじゃないかな、と思うくらいの風景が広がっています。

今でも日本人からするとパタゴニア地方に行くまでもまず1日以上かかる場所でなかなかイメージがしにくいのですが、どうもヨーロッパの人から見ても同じようで1970年代くらいでもパタゴニアって相当未開の地扱いだったのだとか。

それにしてもずいぶん読みやすいです。章が割と小分けになっているので、どこから読んでもいいし、読むのを中断するのもお手軽。

紀行文とかは割と1章が長くなりがちなので、この作品のように小分けにされていると読みやすいし、とっつきやすい。

そして、何よりこの作品が「移動」をテーマにしている作品でもあります。言われてみるとこの登場人物たちはどこかからやってきたり、親類がどこかに行ってたりと何かといろいろな移動理由があります。

まあ、かくゆう著者こそが1番移動していますけどね。

 

■最後に

パタゴニア地方を旅する旅行記文学です。様々な出会いや得た知見がこの作品をより文学的に面白くしています。

旅に出られない今だからこそ読みたい作品です。

 

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