こんばんわ、トーコです。
今日は、恩田陸の『夜明けの花園』です。
■あらすじ
湿原の異国情緒漂う、全寮制の学校が舞台。
ここには、様々な事情を抱えた生徒がいます。さて、どんな事件が起こるのやら…。
■作品を読んで
恩田陸の学園ものミステリー系です。これを読んでいるとすごく「六番目の小夜子」を思い出します。
こんな雰囲気で、なんか夢中になった頃の懐かしい感じ。
ですが、この作品は連作短編なのでとても読みやすいです。また、登場人物もおおむねラップするので、読みやすい作品ではあります。
帯を見るとこの作品はゴシックミステリーという分野。誰がそんな呼び名を考えたのでしょうか。初めて聞く言葉ですわ…。
実を言うと、なんとなく読んだことのある作品が混じっていました。どうやら、「図書室の海」という作品と「朝日のようにさわやかに」に収録の短編を底本としていると書かれていますが、トーコが読んだことのあるのはどっちもなのだが、なんか上手く思い出せない…。
まあ、それはいいとして本編に行きましょう。
この作品は、全寮制のいわくつきの学校を舞台としています。
特殊な事情を抱えた生徒がしばしば行方不明になるという、それはそれはホラーな学校。
最初のヨハンの章を読めば、この学園が不思議な空間だということ、恩田陸ほど学校という空間を美化しない作家だったけなあということを思い出させます。学校ってそういえばそんなところよね、と。
で、印象に残ったセリフがこれ。
ここは優雅な檻。中で腐るかどうかは、本人の心がけに掛かっている。
このセリフは、学生に限らず全ての社会人に送りたいです。優雅な檻を会社や自分の置かれている環境に当てはまります。
あなたは一体どんな風になりたいですか?この解像度というか、明確な方ほど目標達成が早いですし、人生の満足度というか、たどり着いた場所が望んでいるものになっている方が多い気がします。
もちろん、そんなことはない方もいらっしゃるかもわかりませんが。
ヨハンの学校では、中学・高校の6学年を縦割りにした「ファミリー」というグループで分けられています。
そこに、ジェイというヨハンより年下の少年が入学しました。
そんな折に「笑いカワセミ」というゲームが流行ります。閉鎖的な環境のこの学校では、娯楽や刺激の少ない学生たちの間で瞬く間に流行ります。
そんな中、ある日の昼食にジェイの持っていた薬の瓶に毒が入っていてそれを食事の中に入れたと騒ぎになりました。
実際にはジェイの持っていた薬の瓶に毒はありませんでしたが、ジェイはショックを受け退学することになります。
しかし、最後にドンデン返しが待っています。全く油断ならん学校ですね…。
短編集に登場する人物たちは皆、お家の事情が色々ある方たちばかりです。
最終話の大学生になった理瀬の章を読んで、ヨハンのパートナーが理瀬であることが判明します。
また、この家もいろいろな事情を抱えた家だということがわかります。というか、パパがまさかの女装家ですからね…。
そのパパの依頼である国のリゾートでバカンスを過ごします。それは読み進めるとわかってきますが、なんかこのバカンス絶対に何か仕組まれてる感ありありですね、と思いました。
トーコは理瀬のおばあちゃんの言葉が結構好きです。
おまえにはどうすることもできないことで思い悩むな。結果に意味を求めるな。ただし、経験からは必ず何かを得て教訓とせよ。
なかなかいいことを言いますね。というか、この地味にピンチな状況でそれ思い出すんだ…。経験から学ぶ。これも大事ですけどね。
そこでなんとテロ事件が発生します。
実は、ネタバレですが、理瀬の他の客はおそらく考古学の教授以外全員いわくつきでした。
もちろん任務の主旨はわかっていたので、理瀬自身も相当用心していることはこちらにもひしひしと伝わりますが。
こちらの作品は違う意味でハラハラ、ドキドキもの。
他にも、校長先生がこの学校の学生だった頃の話、大学生の理瀬の話だけでなく幼き日の理瀬の話、黎二と麗子の秘密の話もあります。
今こうして書いていて校長先生ってもしや…となんか登場人物のパズルのピースが合致した感があります。
すげえ仕掛け…。
■最後に
ゴシックミステリーという何とも未知の分野感のある言葉で記載がありますが、何ってことはなく、ミステリー仕立ての短編小説集です。
ですが、登場人物がつながって出てくるので、とても面白いと思いました。