こんばんわ、トーコです。
今日は、高峰秀子の『私のごひいき 95の小さな愛用品たち』です。
■あらすじ
往年の大女優として活躍していた著者ですが、意外や意外生活は非常に地に足がついたものです。
そんな生活を彩っていたものたちについて、使用感を含めた紹介がなされています。
■作品を読んで
『わたしの渡世日記』の最後で、松山善三と無事に結婚して終わります。この作品は、結婚し、その後活躍した生活の道具たちが描かれています。
この作品は、高峰秀子死後になって出版されました。なんでも、養女の斎藤明美さんも知らなかったというくらいの作品でした。
というか、養女の方が出会う前に連載が終っていたので、知る由もなかった、というのが正しいのでしょう。
養女の斎藤明美さんが出会った当時、高峰秀子は西武百貨店のアドバイザーをしていたようで、月に1度の会議に出席していたそうです。
これは、ちょっと初耳でした。ですが、商品の使用感や分析は確かにアドバイザーを勤めるにふさわしいなあ、と思います。
で、この連載はなんと20年続いていました。あとがきには、20年前の決心をこう記しています。
二十年前、このページを引き受けたとき、私は三つの条件を心に決めた。一つめは、「読者のみなさんが、二、三回のコーヒー代を節約する程度の価格で購入できるもの」。二つめは「シンプルで実用的で、常時役に立つもの」。三つめは「どんなにいいものでも日本国で購入できないものは選ばないこと」
なんか、ちゃんと読み手のことを考えてくれていて、非常に有難いですね。とはいえ、本人曰く、ハードルを設けたものだから、逆に苦しみがあったようですが。
ちなみに、著者はスッキリサッパリした生活が好きで、必要限度以外のものは置いてないそうで、コップ1個たりとも置いてないそう。うわー、うらやましいわ、マジで。真似したいです。
いらないものが多いし、整理しきれていないしで大変なことになっています、トーコの部屋…。
ちなみに、この連載で数多く紹介していたものはというと、台所用品です。台所につっ立っていた時間が長かったということを本人は言っています。
が、近くで見ていた養女の斎藤明美さんから言わせれば、夫松山のためにつっ立っていた、1日も休まず、台所に立って美味しい料理を作るのは松山がいるからこそ。
高峰自身は、ものぐさらしく、松山がいなかったら食事は紙のお皿とコップといったようですから。
大切な人との食事のために、より良い道具を見つけようと結構努力されていたのでしょうね。それに目をつけた西武百貨店は偉い。
そんな身近な人の生活のため、読者の生活のために選んだ品々を見ていきましょう。
おそらくですが、ポストイットは間違いなく今でも手に入るものですが、そうでないものもたくさんあります。
ですが、形を変え、名前を変えてきっとあるような気がするものもありますし、逆にこんなものの需要があったんだなこのころはというものもあります。
まず、雨傘のレインコート。折りたたみではなく、雨傘を特に電車の中に持ち込むときは特に困ります。だって、雨のしずくがぽたぽた落ちるのですからね。
というか、いつの時代もそう思う人がいるのですから、まあ驚いた。確かにこれさえあれば、他人に迷惑をかけずに済みますからね。
著者も、雨の日にはハンドバックにレインハットと傘入れを持参していたのだとか。うーん、買おうかな、迷う。
ちなみに、連載当時の値段は300円で百貨店で売っているとのことですが、今の時代だと1300円くらいはしますよ。
時代を感じるのは、「おットクハガキ」です。今の時代だとめっきり出番が減りました。
これは、手紙を書いてからアイロンをかけて1枚にするというもの。もらった方は、角からはがして文面を読むというもの。
なんか、小学校の時にそんなことをしたような、しなかったような。ちょっと懐かしいです。まあ、著者は面倒だからなんとかならんか、と言ってますが。
これは、5枚入りで250円だそうです。
また、この作品を読んで初めて存在を知ったものがあります。それは、「片くち」です。
昔はどこの家にもありましたが、今ではステンレスのボウルのように使われていたのだとか。丼鉢の一方がひょっとこのようになっており、注ぎやすい形状になっているものといったところでしょうか。
卵とじを作るときやかけ汁を小分けにしたりといろいろと使い道のある道具のようです。
著者も、民芸品コーナーでせとものとして売られていることが多かった当時でプラスチック製の片くちを見つけたときは飛び上がるほどうれしくて、今では台所のスターになったとか。それくらい使い道のある道具です。
ちょっと使ってみたいかも。当時の値段で240円です。ガラス製で大体1000円以上しますが、なんと今では芸術品レベルのものもあります…。著者もびっくりするだろうな…。
紙マスクの紹介もありました。連載当時は、医者などの「使い捨て医療品」で市販されていないものでしたが、薬局で取り寄せることは可能なものでした。
今の時代だと紙から不織布になり、しかも必須品になるのですから、隔絶の感があります。
石鹼袋という商品は、まさかの無印良品のものでした。著者曰く、これがないとお風呂場で洗ったような気がしないというくらいのこだわりのある一品です。
いろいろと試した結果、この商品が現時点では1番だという代物。これまでのものと、今回の商品の使用感レポートがまことに詳細です。
暮らしの手帖に引けを取らないんじゃないかな…、このレポート。往年の「暮らしの手帖」を読んだことがないので、何とも言えませんが。
ちなみに、この商品に関しては今の方が安いかもしれません。ただ、材質的に著者が満足するかは不明ですが。
あとは、「三角コーナーいらず」。現代でもこれはあります。トーコも欲しいです。三角コーナーの底に汚れが溜まるので、掃除がめんどくさいんすよ。
しかも驚くほど説明がコンパクト。著者は三角コーナーを置かない主義なので、簡単清潔な器具を台所の引き出しにしまえるのがいい、と。著者が説明するよりも実際に使えばわかるから、と詳しい説明はありません。
すっげーメリハリのある連載。ロフトや東急ハンズで売ってると書かれていますが、この人本当に足を運んでんのか、とびっくりするような店です。当時は400円くらいで売ってますが、現在だと1500円ほどで売られています。
他にも、メモ用紙(9センチ角、800枚のブロックメモが当時は1500円です)万年筆、ぬれナプキン、栗くり坊主(栗の皮剥き機)キッチンナイフシャープナー、ティッシュBoxなど。
著者の暮らしの上でのエピソードとともにこだわりの逸品が紹介されています。
暮らしの達人ですな、無駄がない。そんな暮らしができるようになりたい。
ちなみになぜトーコが値段の紹介をしたのかというと、どれくらいのインフレがあったのかを見たかったからです。
スタート時は1970年代半ばなので、価格は大体3倍くらいになってますね。うん、確かにインフレはありましたね。
表紙の写真も、なかなかものに対するこだわりが感じられる写真な気がします。
最後に、これまでに紹介した高峰秀子作品を解説していますので、こちらの記事も併せて読んでみてください。
145.『わたしの渡世日記』、180.『巴里ひとりある記』、214.『にんげんのおへそ』
結構紹介していますね。個人的には、どの作品も飾らない、潔いエッセイです。
トーコもかなり高峰秀子作品は好きなので、どうしても増えてしまいますね…。
■最後に
無駄のない生活を送り続けた著者の中での選ばれた逸品が紹介されています。暮らしのヒントが詰まっています。
時に詳細な分析で、時には実際に使ってみて、と様々なアドバイスや意見を込めた暮らしの品の紹介でした。